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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)204号 判決 1999年1月19日

神奈川県相模原市小山1丁目15番30号

原告

株式会社 オハラ

代表者代表取締役

梶川洋

訴訟代理人弁理士

坂本徹

原田卓治

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 伊佐山建志

指定代理人

酒井正巳

後藤千恵子

小池隆

主文

特許庁が平成8年異議第70471号事件について平成10年5月20日にした決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  原告の求めた裁判

主文同旨の判決

第2  特許庁における手続の経緯

原告は平成3年4月17日、名称を「光学ガラス」とする発明(本件発明)につき特許出願(平成3年特許願第177859号)をし、平成8年4月2日に特許第2505998号として設定登録され、同年6月12日に特許掲載公報が発行されたところ、同年12月12日に特許異議の申立てがあり、平成8年異議第70471号として審理された結果、平成10年5月20日、別紙1の理由により「特許第2505998号の特許を取り消す。」との決定(取消決定)があり、その謄本は平成10年6月10日原告に送達された。

原告は平成10年8月4日訂正審判の請求をし、平成10年審判第39059号として審理された結果、同年9月30日、別紙2の理由により「本件特許発明の明細書を上記審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める」旨の審決(訂正審決)があり、その謄本は同年10月12日原告に送達された。

第3  原告主張の決定取消事由

取消決定は、訂正前の請求項1に係る特許は特許法29条1項3号、113条2号に該当すると判断したが、訂正審決があったことにより、取消決定はその根拠を失ったので、取り消されるべきである。

第4  当裁判所の判断

訂正審決に示されているように、本件訂正は、本件発明の請求項1の数値限定の範囲を更に減縮し、特許請求の範囲を減縮するものである。したがって、取消決定は、本件発明の要旨を結果的に誤って認定して引用例1記載の発明との対比判断をしたことになり、この誤りは取消決定の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

よって、取消決定は取り消されるべきである。

(平成10年12月24日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

(別紙1)

取消決定の理由

1.本件発明

本件特許第2505998号は、平成3年4月17日の出願であって、平成8年4月2日に設定登録され、同年6月12日に特許公報に掲載されたところ、特許異議申立人山本邦宏から同年12月12日付けで特許異議の申立てを受けたもので、その後、平成9年2月21日付けで当審から取消理由の通知がなされ、その指定期間内の平成9年4月24日に訂正請求がなされたが、訂正は認められないとして同年6月10日付けで当審から訂正拒絶の理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。

2.特許異議申立人の主張

特許異議申立人山本邦宏(以下、「申立人」という。)は、甲第1~4号証を提出して、次のような主旨の主張をしている。

「本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載の発明と実質的に同一であるか又は甲第1~4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項の規定又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって本件特許は特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。」

3.訂正の要旨

平成9年4月24日付けの訂正請求書における訂正の要旨は、特許請求の範囲の減縮および明瞭でない記載の釈明を目的としてするものであり、次の(1)~(6)を訂正の内容とするものである。

(1) 請求項1第1行「TiO2  20~30%」を「TiO2  20<~30%」に訂正する。

(2) 請求項1第4行「MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 2~15%」を「SrO+BaO 2~15%」に訂正する。

(3) 明細書段落001第4行「Mg、Ca、Sr、Ba、Zn」を「Sr、Ba」に訂正する。

(4) 明細書段落005第2行「TiO2  20~30%」を「TiO2  20<~30%」に訂正し、第4行~第5行「MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOを「SrO+BaO」に訂正する。

(5) 明細書段落006第6行「20%未満」を「20%以下」に訂正する。

(6) 明細書段落007第2行~第3行「重要成分であるので、1種以上含有させる必要があるが」を「重要成分であるが、」に訂正し、第4行「それらの成分の1種または2種以上」を「これらの成分の中SrOおよびBaO成分の1種または2種」に訂正する。

4.訂正の適否

そこで上記訂正が適法であるか否かを検討する。

上記「3.訂正の要旨」の訂正の内容の「(2)」、「(3)」、「(4)」及び「(6)」は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的として、請求項1の「MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 2~15%」を「SrO+BaO 2~15%」と訂正し、該訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載中の記載も該訂正内容に符合させるべく訂正するものである。

しかしながら、「SrO+BaO 2~15%」

とする点は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ、これから、直接的かつ一義的に導き出せる事項でもない。

したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

5.特許異議申立てについての判断

(1) 本件発明

上記「4.」で述べたように、上記訂正は認められないから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書の記載からみて、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりの次のものと認める。

「重量%で、SiO2  45~65%、B2O3  0~4%、TiO2  20~30%、Na2O 0~25%、K2O 3~30%、ただし、Na2O+K2O 10~30%、MgO 0~10%、CaO 0~10%、SrO 0~10%、BaO 0~15%、ZnO 0~10%、ただし、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 2~15%およびNb2O5  0~4%の範囲の各成分を含有し、かつ、屈折率(Nd)約1.58~1.75、アッベ数(νd)約28~45の範囲の光学恒数を有することを特徴とする光学ガラス。」

(2) 特許法第29条第1項違反について

当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特公昭34-5128号公報、申立人が提示した「甲第1号証」に該当。以下、「引用例1」という。)には、「本発明はレンズに適し、高屈折率で重量及び厚さを最小限に出来るガラスを提供するものである。」(第1頁左欄第12~14行)とあり、「SiO2  50~70%、全アルカリ金属酸化物10~20%(Na2O 0~20%、K2O 0~18%、Li2O 0~5%又はその混合物)CaO及びMgO又はそのいずれか5~20%、TiO2  5~20%、B2O3  0~10%、Sb2O5及びAs2O5又はそのいずれか0~2%を含むことを特徴とする2.7g/cm3以下の密度と1.56より小ならざる屈折率とを有する比較的高き屈折率と低密度のガラス。」(第2頁特許請求の範囲)について記載され、具体的なガラス組成が第1表(第1頁左欄第15行~同欄下から第10行)に記載されている。

そこで、本件発明と引用例1に記載の発明とを対比すると、引用例1のガラス組成は、本件発明のそれと重複する数値範囲を有しており、引用例1に記載の発明の屈折率も、本件発明のそれと重複する数値範囲を有しているから、ガラス組成の点及び屈折率の点で両者は一致するが、前者は、アッベ数(νd)約28~45の範囲の光学恒数を有するものであるのに対し、後者には、該アッベ数について記載がない点で相違する。

そこで、この相違点について検討するに、ガラスの組成が同一であれば同一の屈折率およびアッベ数となること及び引用例1の屈折率とアッベ数の数値範囲が本件発明のそれら数値範囲と重複する部分を有することが、当業者にとって自明な事項といえるから、引用例1に記載のガラスは、本件発明の、アッベ数(νd)約28~45の範囲の光学恒数を有するものという要件を満たすことになり、結局、両者間に差異は認められず、結局、本件発明は引用例1に記載の発明と同一である。

6.むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明であるから、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当するものに対してなされたものである。

したがって、本件請求項1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当する。

よって、結論のとおり決定する。

(別紙2)

訂正審決の理由

Ⅰ.請求の趣旨

本件審判請求の要旨は、特許第2505998号の明細書を、審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正事項は、下記<1>~<7>のとおりである。

<1>【請求項1】第1行(特許公報【請求項1】第2行)に「TiO2  20~30%」とあるのを「TiO2  20%を超え30%まで」に訂正する。

<2>【請求項1】第3行(特許公報【請求項1】第5行)に「BaO 0~15%」とあるのを「BaO 2~15%」に訂正する。

<3>明細書段落【005】第2行(特許公報第2頁第3欄第19行)の「TiO2  20~30%」を「TiO2  20を超え30%まで」に訂正する。

<4>明細書段落【005】第4行(特許公報第2頁第3欄第22行)の「BaO 0~15%」とあるのを「BaO 2~15%」に訂正する。

<5>明細書段落【006】第6行(特許公報第2頁第3欄第36行)の「20%未満」を「20%以下」に訂正する。

<6>明細書段落【008】第2行(特許公報第2頁第4欄第30行)の「(No.1~No.12)」を「(No.1~No.11)」に訂正する。

<7>明細書段落【009】【表1】における「実施例9」を削除し、「実施例10」を「実施例9」に、「実施例11」を「実施例10」に、「実施例12」を「実施例11」にそれぞれ訂正する。

Ⅱ.当審の判断

各訂正事項について検討する。

1. 訂正の目的

(1)訂正事項<1>は、訂正前の請求項1におけるTiO2の限定範囲を、20~30%から、20を超え30%まで、に訂正することを主旨とするものである。

この訂正は、TiO2の含有量範囲「20~30%」から「20%」を除外する目的でなされたものであって、数値限定の範囲を更に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。

(2)訂正事項<2>は、訂正前の請求項1におけるBaOの限定範囲を、0~15%から2~15%に、訂正することを主旨とするものである。

この証は、BaOの含有量範囲「0~15%」をこの数値限定の範囲を更に減縮して「2~15%」とするための証であるから。特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。

(3) 訂正事項<3>~<7>は、いずれも、請求項1が上記「(1)」及び「(2)」のように訂正されたことによって生じた発明の詳細な説明中の記載の不整合を修正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに当たる。

2.新規事項

(1)訂正事項<1>は、先行技術に記載された発明との差異を明確にするため、該先行技術に記載された事項である、TiO2の含有量が「20%」のみを除外する目的でなされたものであって、いわゆる、「除くクレーム」にする訂正である。このような、「除くクレーム」にする訂正は、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)に記載された事項の範囲内のものから直接的かつ一義的に導き出せない事項を記載したものであるが、例外的に新規事項とは取り扱わないこととしているから、上記訂正事項<1>は新規事項の追加に該当しない。

(2)訂正事項<2>は、当初明細書に記載されたBaOに関する数値範囲「0~15%」のうち、最小値を変更して「2~15%」とするものである。

訂正後の数値範囲の最小値「2%」については、当初明細書において、実施例3の数値として記載されており、且つ、訂正後の数値範囲「2~15%」は、当初明細書に記載された数値範囲「0~15%」に含まれているもので、本件発明の記載を総合的にみると、訂正後の数値範囲「2~15%」は、当初明細書に記載されていた事項であるといえる。

したがって、訂正事項<2>は、新規事項の追加とならない。

(3)訂正事項<3>~<7>は、上記「(1)」及び「(2)」と同様の理由によって、新規事項を追加するものとはすることができない。

3.拡張・変更

訂正事項<1>及び<2>は、先行技術との一部重複を避けるための、いわゆる「除くクレーム」に相当する訂正若しくは実施例で支持される数値を数値範囲の最小値とする訂正であって、当初明細書に記載した事項の範囲内であり、かつ、特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、訂正事項<3>~<7>と併せて、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。

4.独立特許要件

訂正後の明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりめものである。

「重量%で、siO2  45~65%、B203  0~4%、TiO2  20%を超え30%まで、Na2O 0~25%、K2O 3~30%、ただし、Na2O+K2O10~30%、MgO 0~10%、CaO 0~10%、SrO 0~10%、BaO 2~15%、ZnO 0~10%、ただし、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 2~15%およびNb2O5  0~4%の範囲の各成分を含有し、かつ、屈折率(Nd)約1.58~1.75、アッベ数(νd)約28~45の範囲の光学恒数を有することを特徴とする光学ガラス。」

ここで、独立特許要件の存否の検討は、本件特許に対して平成8年12月12日付けで異議申立人山本邦宏がした特許異議の申立て(平成8年異議第70471号)に対する平成10年5月20日付け「特許異議の申立てについての決定」において「特許を取り消す。」としたその理由に引用された刊行物1及び同申立てにおいて引用された刊行物2~4について行う。

(1)刊行物の記載内容

<1>刊行物1(特公昭34-5128号公報)

「本発明はレンズに適し、高屈折率で重量及び厚さを最小限に出来るガラスを提供するものである。」(第1頁左欄第12~14行)とあり、「SiO2  50~70%、全アルカリ金属酸化物10~20%(Na2O 0~20%、K2O 0~18%、Li2O 0~5%又はその混合物)CaO及びMgO又はそのいずれか5~20%、TiO2  5~20%、B2O3  0~10%、Sb2O5及びAs2O5又はそのいずれか0~2%を含むことを特徴とする2.7g/cm3以下の密度と1.56より小ならざる屈折率とを有する比較的高き屈折率と低密度のガラス。」(第2頁特許請求の範囲)について記載され、具体的なガラス組成が第1表(第1頁左欄第15行~同欄下から第10行)に記載されている。

<2>刊行物2(「ガラスハンドブック」朝倉書店、1975年(昭和50年)、第73~77頁)

刊行物2の第73頁の図2.42にはガラスの種類によって屈折率(nd)とアッベ数(νd)はほぼ同一の値となることが示されている。

<3>刊行物3(特開昭52-25812号公報)

TiO2  0.5~50%含有する低密度フリント系光学ガラスについて記載されており、発明の詳細な説明に、「TiO2も重要なものの一つである。これも屈折率を高めるとともに密度をなるべく低くする必要からNb2O3と共にその含有量は非常に大切な要素となる。即ちNb2O3とTiO2とを共存させることによりガラス化範囲は広くなりNb2O3とTiO2の合量が70%以上を含有させても充分にガラス化が可能である。このことはそれだけ屈折率を高くしその割合に密度を低くすることが可能であるということを意味する。」(第2頁左上欄第11~19行)及び「RO成分は特に低分散のガラスを得るのに適した成分であり特にCaO、BaOは分散値νdを大きくするために有効であり、・・・」(同頁左下欄第3~5行)との記載がある。

<4>刊行物4(特開昭63-265840号公報)

TiO2  1~35%含有する光学ガラスについて記載されており、発明の詳細な説明に、「TiO2およびNb2O5の各成分は、ガラスに高分散性能を与えるのに有効な成分である。」(第3頁左上欄第14~15行)との記載がある。

(2)29条1項3号について

訂正発明と刊行物1に記載の発明とを対比すると、両者は、TiO2の成分量及びBaOの成分量を異にするから、光学ガラスを構成する原料組成が異なり、光学ガラス自体異なるものといえる。

したがって、屈析率及びアッべ数について検討するまでもなく、訂正発明が刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。

同様に、刊行物2~4に記載された内容をみても、訂正発明で規定する光学ガラスの酸化物組成及び当該組成割合については、記載されていない。

以上のように、訂正発明が刊行物1~4に記載された発明であるとすることはできない。

(3)29条2項について

訂正発明は、特許明細書の従来技術の項に「従来、上記光学恒数を有するガラスとしては、PbO含有珪酸塩系ガラスが良く知られている。しかし、ガラスの製造過程等における公害問題に対処するため、有害なPbO成分を含まず、これに代わってTiO2を含有するガラスが種々検討されてきている。・・・これらのガラスはいずれも失透に対する安定性や光線透過性が不十分であり、また前者のガラスは、溶融の際、弗素成分の揮発により均質化しにくい。」(特許明細書【0002】【従来の技術】の欄)と記載されているような問題点を解決すべく、「従来から具体的に開示されていない特定組成範囲のSiO2-TiO2-K2O-RO系のガラスにおいて、前記光学恒数を維持しつつ、耐失透性と光線透過性が改善された量産可能な所期のガラスが得られることをみいだし、本発明をなすに至った。」(【0004】【課題を解決するための手段】の欄)というもので、その具体的な構成として、訂正後の請求項1に記載の構成をとるものである。

これに対し、刊行物1に記載のものは、訂正発明の光学ガラスで必須組成成分としているBaOを含有しておらず、しかも、TiO2の組成割合についても20%以下であって、「20%を超え30%以下」という多量なTiO2を含有させるという訂正発明の技術思想は、刊行物1には記載されていないし示唆もされていない。

また、刊行物2及び3に、「TiO2も重要なものの一つである。これも屈折率を高めるとともに密度をなるべく低くする必要からNb2O3と共にその含有量は非常に大切な要素となる。」(上記「4.(1)<3>」参照)及び「TiO2およびNb2O5の各成分は、ガラスに高分散性能を与えるのに有効な成分である。」(同じく「4.(1)<4>」参照)と記載され、TiO2が屈折率を高める機能を有することが知られていおり、また、刊行物3に「CaO、BaOは分散値νdを大きくするために有効」(同じく「4.(1)<4>」参照)であることが知られていたとしても、訂正発明において規定するTiO2及びBaOの特定な組成割合を示唆するものではない。

そして、訂正発明は、上記請求項1に記載された構成を採ることによって、「有害なPbO成分を含有せず、従来のガラスに比べて、耐失透性と光線透過性に優れ、着色が少なく、また量産性にも優れているので有用である。」(本件明細書【0011】【発明の効果】の欄)という訂正発明の効果が得られるものである。

したがって、訂正発明は、上記刊行物1~4が存在していても、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明にも該当しない。

Ⅲ.まとめ

以上のとおりであるから、本件審判請求は特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。

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